千曲川の鮎の塩焼き

日本の食卓に並べられたおかずは、代々先人たちの愛情と知恵で育まれ伝えられてきたものです。
旬の材料に、体調に合わせた今日の味付けをおこなう。それは今日しかない「一期一会」のもの。この微妙さをさっと作り出すのがおかずづくりの妙味ではないでしょうか。そして次の世代に伝えられてゆくおかずの神髄のような気がします。
それぞれの国で伝えられ、今日も家族で囲む食卓がその国の心を育て、その国らしさを伝え続けている根幹のように思います。
穏やかで、繊細でやさしい心を育むおかずの数々が二十一世紀へも伝わってゆくようにとの想いから膳はスタートしました。

黍ご飯と烏賊の塩辛

日本の食の文化は家庭料理にあります。私たち日本人は、長い間、穀類やいも類を主食として、野菜、海草、豆類、魚介類などを食べてきました。
昭和三十年代から食生活は大きく変わり、「タンパク質が足りないよ」という言葉とともに、お米の消費量は急激に減少し、パン、砂糖、油脂、牛乳、乳製品、肉、食肉加工品などが急増しました。このような変化を「食生活が豊かになった」とか「子供たちの体格は見違えるほど立派になった」と言われましたが、最近ではあまり耳にしなくなりむしろ「体格はよくなったが体質、体力は向上しているのだろうか?」という疑問が多くなっています。
花粉症やアトピー性皮膚炎の子供が急速に増えていることも、現代の食生活が大きく影響しています。

食生活は豊かになったのではなく、我々の体にあわなくなりつつあります。私たちは何を食べるべきか根本的に見直さなければならない時期にきたようです。
主食のご飯をしっかり食べ、みそ汁、漬け物を組み合わせて基本食とする。これに季節の野菜、魚介、イモ、海草などを副食とし、調味料こそ良い物を選ぶ。飽食の時代に逆行しますがこんな食生活が真の意味での「豊かな日本食」ではないでしょうか?

  • 一、ごはんを食べましょう
  • 一、発酵食品を常食しましょう
  • 一、季節の野菜を中心に
  • 一、神経質にならない程度に安全な食品を
  • 一、食事はゆっくりと

ところで、膳では和食と謳っているのに、なぜカツやビーフシチュー、ハンバーグがメニューにあるのでしょうか? 「普段一般的に食されている物が、日本食ではないか」という考えで洋食と呼ばれている物もメニューに取りいれました。 「味 百年」という言葉があります。文明開化により肉食が公認され、1872年(明治五年)の天皇の肉食宣言などもあり、多くの西洋料理が日本に入ってきました。明治、大正、昭和と西洋料理店が腕を競い、昭和初期の街の洋食屋さんが庶民に親しまれる気軽な洋食店を目指したため、トンカツ、ハンバーグ、シチュー、オムレツ等々数多くのメニューが、家庭の食卓にものぼるようになり、百年を経過すると立派な日本食に生まれ変わりました。 時代によりハンバーガーもスパゲティーも日本食になるかもしれませんが、やはり食に偏りがないようにバランスを考えた食事が必要ではないでしょうか。そのためにも主食のご飯があり、漬け物やみそ汁は本当に発酵しているものを使用し、野菜料理は煮物、和え物、お浸しを中心に、肉類、フライ類は控えめにし、魚介類を多く摂るように心がけたいものです。 ご飯を主食にすれば副食が適切になり、季節の野菜や魚介類などが多い食事になります。ご飯が足りないと、甘いジュースや菓子類が欲しくなります。みそ汁、漬け物、納豆などの発酵食品には有用な微生物がたくさん存在し、体内に入ることで私たちが元気に働くことを助けます。 そのためにもきちんと発酵した質の良いものを選びたいものです。 魚介や野菜は何を食べるべきかではなく、その季節に何がとれるかを優先すれば良いのではないでしょうか。 より多くのバランスのとれたおかずを用意していきたいと思っております。

カキフライ

上田・塩田産の和風ビーフシチュー

黒豆納豆サラダ

お造り