戦後すぐ、現大手家電メーカーの前進の会社にて、トランジスタラジオの国産一号機を手がけました。それ以前の真空管のアナログ式ラジオに比べると、「技術的にたいへんな進歩を遂げ、壊れにくい良い製品ができた」という充実感を得ていました。
 
 その後、信州の産業用機械の小さな工場に呼ばれ、12人だった従業員は1,000人規模になり、一部上場を遂げました。
しかし今になってみると、「間違いではなかったか」と反省することのほうが多いのです。
 
 つまり、我々が高度成長期に「国のため、人のため」と成した仕事が、結果的に日本の社会を壊してしまったのではないか、という自責の念です。短期間にたいへんな勢いで文明が伸びたことに対して、社会がついていかれなくなってしまったのではないか、と。
 
 確かに世の中は進歩し、情報化し、グローバル化しましたが、それが本当に社会や人類のためになったか、人を幸せにしたか、といえば疑問です。音響機器の開発に取り組みながら、同時に、熟成日本酒の開発を行なっていますが、私自身のなかには「現代に生きる日本文化」という共通のテーマがあります。
 
 またそのビジョンは、ものづくりの国でなければいけない。「Made in Japanの復活」です。独自な商品を、少量でもきめ細やかな感覚で創る。先進工業国が混迷をきたしている中、"和と自然"が作り上げた日本の文化を生かしたものづくりが、次の時代の日本の再生に繋がると確信しています。
 
 長く生きてきたからこそわかる日本のすばらしさを、少しでも伝えられればうれしいのですが・・・。
 

株式会社シマシステム 代表取締役 島 喜治

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