蓄音機・ステレオ・ラジオ・テレビ・カメラ等々すべてアナログで発展してきました。1955年トランジスタの製造が始まり、コンピューターの進化とともに情報・通信機器がデジタル化され、ネットワークで繋がり今日のIT時代を迎えました。
 しかし、音の入出力は未だにアナログが使用されています。音の再生に使用されるスピーカーは100年に渡り様々な改良・改善され今日に至りますが、音の本質は複雑で完璧な再生は容易ではありません。
 そのような状況の中で、特に残念なのはスピーカーの研究がここ20年くらい停滞していることです。昔、既製品の限界を知ったマニアのほとんどはメーカー各社が販売しているスピーカーユニットを使い、思い思いの音の出せる自作スピーカーを作っていましたが、現在スピ ーカーユニットを手に入れようとしても製品の数がかなり限られています。
 
 映像も写真も音もデジタル化が急速に進み、いろいろな機器が日進月歩で市場に投入されてきますが、音の世界の入口(マイク)と出口(スピーカー)は相変わらずアナログの世界です。ただ単に音を出すためのモノから、楽器と同じく理想の音を出すために創意工夫で創られたものまで多種多様です。
 
 
 
 
 

左  Anthony Gallo
か  B&W Nautilus
ら  DENONSC-CX303
 
 
 

 
左  eclipsea5
か  JBL 4365
ら  VIVID AudioG1 Giya
 

 ひょうたんにスピーカーを組み込んだ可愛らしいものから、スピーカーユニットをずらりと並べたタイプのもの。大型のホーンスピーカーを背負わせたもの、ガラスを使用して中の構造が見えるスケルトンタイプのものなどデザインを見てるだけでも楽しくなります。
 つい最近までスピーカーは、ブックシェルフ型と呼ばれる四角い箱というのが定番でした。吸音材を張ったり、バスレフポートを設けたりして四角四面の箱の中の背圧を調整し、音の歪を無くすよう工夫されてきました。そのうちに角を丸めたたまご型の形状が出てきたり、多面体や球形のスピーカーまで現れ、加工技術や素材の進化によって箱(キャビネット)そのものも良質な音を追求するのに大きな変化を遂げました。

 オーディオシステムの中でも「音の善し悪しはスピーカーで決まる」と言われるのもこのように多種多様なスピーカーが存在するからでしょう。
 好みの音楽のジャンルによって選ばれるスピーカーは異なってきます。しかしひと頃のようにエネルギッシュなサウンドをパワーで聴かせるというよりは、クセがなくニュートラルで応答性の速いユニットが好まれるようです。音源側のデジタルデータがより細分化してきているためにスピーカー側もそれに応えられるようでないといけません。


 

 

  スピーカーを単体で音を流すと低音がほとんど聴こえて来ません。スピーカーの振動板が振動するとき、その前面と背面から出た音は逆位相になっているためです。つまりコーンが前に動いて空気を押しても、背面側の空気圧が下がり、お互いにキャンセルしてしまって音は聞こえません。音が回り込む回折効果は低音になるほど大きいので、低音を効かせるためには、振動板の背面から出る音を何らかの方法で遮断する必要があります。逆位相を利用した技術にノイズキャンセリングがあります。周囲の音(環境音という)を内蔵のマイクロフォンで収音し、これと逆位相の信号をオーディオ信号と混合して出力することによって、ヘッドフォンへ外部から侵入する環境音を軽減したものです。



 

 平面バッフル型は、ユニットを板(バッフル)に取り付ける事によって、背面に放出された低音が前面に回折するのを遮るという方式です。単なる板にスピーカーユニットを取り付けたので、ユニットの動作を抑える事なく、伸び伸びと鳴るのが長所です。
 その一方、より低い帯域の背面の低音は回折して前面の音と打ち消しあうので、低音再生能力は他の方式に比べて劣ります。低音再生能力はバッフルの面積に由来します。無限大平面バッフルが理想ですが現実的ではありません。ユニットの動作を抑える事なく、伸び伸びと鳴るという長所は、磁気回路が強力なスピーカーユニットでは、過制動となって現れる。そのためあまり強力ではない磁気回路を持ち、振動板重量が軽いスピーカーユニット向きとされます。そうした振動板重量が軽いスピーカーユニットは、アンプの出力があまり大きくない場合に、必要な音量を確保するために用いられます。そのため真空管アンプが中心で、アンプの出力があまり大きくない時代によく用いられた方式です。



 

 バッフル板を後ろに折り曲げるという方式。これが後面開放型(別名:ダイポール型)で小さいバッフル板でも、平面バッフルに近い効果が得られます。前後の空気が回り込むには、スピーカー筐体を回る必要があり、これにより前後の空気の移動を遮断しようというものです。
メリットとしては、

平面バッフルより小型化できる。

密閉型と違いストレスのないユニットの動きが可能(平面バッフル同等) 

デメリットとしては、

共振が発生する

定常波が発生する

といわれています。 
 ユニット背面がボックス状の大きなダクトとなり、共振が発生します。これは平面バッフルではなかったもので、筒状になることで発生してしまいます。
 また、筐体の上下、左右の面で定在波が発生しますが、先の共振と共にどれぐらい問題になるのかは分かりません。
バスレフ型とは違い大きなダクトとして、背後からも盛大に中高域の音が出ているので、壁などに近いとそれら中高域の反射音が気になります。
 壁面からかなり遠ざけて、反射音が弱ければ、先の共振による不要な音も気付かないレベルになると思います。が現実的に通常の室内では難しいでしょう。


【定常波】

 定常波(ていじょうは、standing waveまたはstationary wave)とは、波長・周期(振動数または周波数)・振幅・速さ(速度の絶対値)が同じで進行方向が互いに逆向きの2つの波が重なり合うことによってできる、波形が進行せずその場に止まって振動しているようにみえる波動のことである。
 定在波(ていざいは)ともいう。振動していない赤い点が節。節と節の中間に位置する振幅が最大の場所が腹。波形が進行しない様子がわかる。Wikipediaより

 
 
 
 


 

 ここまでくると、次は背面も覆ってしまい完全に閉じ込める方式、密閉型エンクロージャーが出てきました。スピーカーユニットの後方を箱で覆い密閉し、振動板の背面から出る音を封止する構造になっています。また、スピーカーユニットの背面から放射された中高域の反射音や定常波を防ぐ目的で、これらを吸収減衰させる吸音材が適量充填されるのが一般的です。この方式はブックシェルフ型と呼ばれる中・小型の密閉型スピーカーに多く採用されています。

 これは、吸音材を多目に充填したエンクロージャーに、やや重い振動板のスピーカーを取り付けたものです。イコライザーを介して電気的に中高音の音圧を抑え、低音を増強させ、高音から低音までフラットな音圧を実現する場合や、マルチウェイスピーカーシステムの場合は高音域スピーカーユニットの能率を下げることも施されています。
短所としては、微小な信号が抑えられ「詰まった音がする」事だと言われています。

  1. 空気バネの効果によって、振動板の自由な動きが妨げられ、微小な信号が抑えられる。
  2. 重い振動板のユニットを用いるため、微小信号の再生能力に欠ける。
  3. イコライザーを介するため、微小な信号が削られてしまう。

 
 信号そのものを大きくする、つまり大音量で鳴らす事である程度の解決ができるため密閉型スピーカーを選ばれる方は、大音量再生を好む例が多いようです。



 

 スピーカーユニット後面から発生する音の低音域をヘルムホルツ共鳴によって増幅する方式で,別名位相反転型とも言います。ポート(ダクト)を設けることによって、その面積と長さで共鳴するポイント(周波数)をコントロールします。ポートを出す位置によって、フロントダクトやリアーダクト、エンクロージャーの底面にポートの出口を設けたものなどいろいろ種類があります。
 エンクロージャー内の空気ばねの強さとポート(ダクト)内の空気の質量(重さ)によって共鳴が起こります。ポート(ダクト)内は空気の塊で、これがスピーカーユニットの背圧によって激しく出入りします。その際の位相は、共振点(F0:エフゼロ)を境に反転します。



 左の図をご覧ください。
 手の動きがスピーカーユニットの裏側(箱内部側)の動き、バネがボックス内部の空気バネ、おもりがバスレフポートの中の空気の塊に相当します。
 バネをもった手をものすごくゆっくり上下させると、バネは伸び縮みせず、オモリが手と同じ方向に動きます。
超低音では、「バスレフポートの中の空気の塊」がスピーカーコーンの裏側と同じ動き、つまり、スピーカー前面と比較すると「逆相」になります。
 ものすごく早く手を上下するとバネは伸びたりたるんだりして、おもりに動きがつたわらなくなります。
 今度は手をある程度のテンポで動かすと、バネが伸び縮みして、オモリは手の上下と逆の動きをします。手を上げるとバネが伸びオモリが下がり、手を下げるとバネが縮みオモリが上がるのです。
 これが「共振」で、「バスレフポートの中の空気の塊」がスピーカーコーンの裏側と逆の動き、つまり、スピーカー前面と比較すると「同相」になります。
 この状態ではわずかな手の動きでオモリが正確な周期で大きく動きます。
手はスピーカー・ユニットの振動板、バネはエンクロージャー内の空気の弾性、そしてオモリがダクト内の空気の塊(重さ)と考えればいいわけです。
 超低音域では、バスレフポートの空気塊がスピーカユニット背面と同じ動きをするので、スピーカー正面の音と打ち消しあって、音は聞こえません。密閉型では低域ダラ下がり、バスレフではあるところからスパッと落ちると言われているのはこのためでしょう。
 共振周波数付近では、バスレフポートの空気塊はスピーカユニット背面と逆の動きをするので、結果、前面と同相になり低音増強になります。
 バスレフの共振周波数をスピーカーユニット正面の音が低下したあたりにもっていき、低下した分を埋め合わせしようとしているのです。
 高音では、バスレフポートの空気塊はほとんど動かないので、密閉型と同じようになります。
ただし、「音を伝える媒体」としての働きがあるので「バスレフポートから中高音が漏れる」ことになり、その影響を低減するためにポートをボックス背面にしている製品もあります。


 

 小型スピーカーは低音再生が苦手なため、上記のバスレフ型を採用する例が多いが、低音の解像度感が低くぼやけた音になったり、低音の楽器の音色が音程によって変わってしまったりと、デメリットも発生しやすい。
パッシブラジエーター型は駆動系を持たない、振動板だけのスピーカーユニット。ドロン(なまけもの)コーンなどともいいます。一定の周波数で共振して、バスレフポートと同様な低音放射の働きをするもので、サブウーファーによく使われています。
 パッシブラジエーターは、磁気回路のないスピーカーをメインスピーカーの同軸線上に設置します。メインスピーカーの背圧で振動板を揺らし、低音の増強を図ります。バスレフ型に対して音のコントロールが容易なため、音質を重視するには有効な方法です。


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